怪奇シリーズ(第3話)「白い猫」

皆さんはペットを飼おうとして犬か猫か迷った場合どうされます。
私は断然犬ですね。犬はペットに限らず様々な方面で活躍しています。例 えば盲導犬、警察犬、麻薬探査犬、災害救助犬などなど。

それに対して猫はどうでしょう。昔はネズミを捕るために猫を飼う家庭が多 かったと思いますが、現在はネズミ退治の目的で猫を飼う人は殆どいない と思われます。
ある国の主席が昔、「黒い猫でも白い猫でもネズミを捕る猫は良い猫だ」と 述べたそうですが、私の周りではネズミを捕る猫など聞いたことがありませ ん。従ってその主席に言わせればネズミを捕らないため悪い猫ばかりにな ってしまいます。

また、盲導猫とか警察猫なんて聞いたことがないですし、そもそもATOKの 辞書には「盲導犬」は登録されていますが「もうどうねこ」は登録されておら ず、無理に変換すると「妄動猫」や「盲動猫」になってしまいます。それで は、なぜ猫はペットとして飼われるのでしょうか。これは言うまでもなく可愛 いですし人間の思い通りになるからだと思います。

ところで、私の自宅の付近に野良猫が住み着いているのですが、飼い猫と 違って目つきが悪いのです。また花壇や野菜畑は猫の糞尿だらけになりま すし、クルマのボンネットは爪で傷を付けられるため家族が迷惑を受けて いるのです。


さて、私がまだ5歳くらいの頃でした。中央区の自宅の前は電車道路で近く には路面電車の停留所があり、いま住んでいる西野の山奥では考えられ ないほど交通の便が良いところでした。住宅は店舗兼用共同住宅でした。 そのうち1戸は電気屋に貸しておりましたが何故か2〜3年で店じまいして しまいました。

やがて私の自宅は電気屋の方に移ることになりました。しばらくして、うち に下宿していた私の叔父が、そこで電気屋を始めることになったのです。 何故、叔父が私の家で電気屋をやることになったのかと言いますと、私の 父は鉄道公安官であったため兼業ができなかったのです。その為、名義 は叔父で私の母が店番などをしておりました。

居間と店舗はガラス戸で仕切られており、そこにいればお客さんが来たこ とが分かりました。電気屋と言いましても、当時の電化製品は真空管ラジ オと電気蓄音機、略して電蓄、そして電気アイロンくらいで、テレビや電気 洗濯機、電気冷蔵庫などはまだ普及していませんでした。

昔の電化製品は壊れやすいものばかりでしたので修理業という商売はうま くいっていたようです。例えば、電蓄やラジオの真空管交換、アイロンのヒ ーター交換、それから住宅の蛍光燈や白熱燈の取付けや電球の交換など は、かなりの収入になったようです。

ある夜、そとに置いてあった自転車を店舗に入れて店じまいした後の話で す。居間から店舗の中を見ますと誰もいないのに自転車の車輪がカラカラ カラと回っているのです。すると白い猫が自転車のペダルをクルクルと回し ながら遊んでいるいるように見えるのです。
いつ店舗の中に入り込んだのだろうかと思いながらガラス戸を開けてみて もネコの姿はどこにも見あたりません。

しかしガラス戸を閉めたら、また自転車のペダルを回す白いネコが見える のです。見えたのは私だけではなく、両親や叔父も同様に見ているので す。特に母親は大騒ぎでした。もう一度ガラス戸を開けて店舗内を調べま したがネコはいませんでした。

今度は、店舗から居間を眺めてみました。すると、ストーブの近くに白っぽ い干し物が干してあり、ストーブの暖気の影響なのかヒラヒラと揺れており ました。母親は、犯人はこの干し物かもしれないと判断し片づけました。白 いネコの正体はやはり白っぽい干し物だったのです。つまり、その干し物 がガラス戸に反射したため店舗に置いてある自転車との合成により白いネ コがペダルをクルクルと回しているように見えたのです。

しかし何故、犬ではなく白いネコと決めつけたのでしょうか。その理由はこう です。非番で休みだった父親が白い野良猫を捕らえて虐待したらしいので す。その光景を母親が見ており大変気にしていたそうです。あまり気にする のでガラス戸に写った干し物が白いネコに見えるという結果になったのでし ょう。

おわり



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