■ 自動制御の話【2】 コンピュータの基本的条件とPID制御アル ゴリズム


3.ディジタル制御用コンピュータの基本的条件.

ディジタル自動制御に用いる理想的なコンピュータは,次の条件を満足しなければなりま せん.

1) サンプリング周期の時間管理が可能である事.
いかなる制御アルゴリズムのパラメータも,サンプリング周期を,きちん と定めて設計されているので,そのための時間管理は不可欠です.
2) I/Oポート(入出力装置)のチャンネル数が多い事.
多くの情報を制御対象などから得ることにより,精度が良く最適な制御 動作を行うことができます.
3) 割り込み入力チャンネル数が多い事.
複数のプロセスを制御するばあいは,効率良くコンピュータを運用でき ます.但し制御する対象が多いと演算処理に時間がかかります。
4) 演算速度が速い事.
演算処理を高速化する事により,複雑な制御アルゴリズムの演算も短 時間でこなす事ができます.
5) ノイズに強い事.
工場や実験室などのノイズ発生源が多い現場で使用することを考慮し その対策は十分に施さなければなりません.


4.PID制御アルゴリズムの簡素化と高速化.

ディジタル制御アルゴリズムの簡素化ついて,各分野で昔から現在まで最も使用され,現 在でも制御装置の基本である,PID(比例,積分,微分動作)制御装置を一例として説明 します.
その制御動作は,P(比例動作)動作に(積分動作)とD(微分動作)を加えた動作であ り,入力信号をK倍して出力信号を得るP動作だけでは,偏差(誤差)が残るため,動作 により偏差を減少させ,更にD動作を加えることにより過渡特性を改善する特長がありま す.
PIDアルゴリズムには,位置型(全値出力形)と速度形がありますが,現在は速度形が主 流であるので,それについての説明を致します.
速度形は手動制御から自動制御に切り替えた際,プロセスに突変(バンプ)を生じさせな いという最大の特長があり制御アルゴリズムは次のように求めます.


但し、Kc:比例ゲイン,Ti:積分時間,Td:微分時間,T:サンプリング周期
    Δm(kT):出力信号の変化分,e(kT):偏差(誤差)

次ぎに(1)式を,Kp=Kc, Ki=Kc・T/Ti,  Kd=Kc・Td/Tとして変形すると


「但し F1=Kp+Ki/2+Kd , F2=−Kp+Ki/2−2Kd 」

のようになり制御プログラムにおいてメインルーチンにてあらかじめパラメータ変換を行い F1,F2を求めます.
従って,コントロールルーチンでは,次の計算のみで良いことになり効率よく演算処理が 行えます.

      

以上のように、PID制御アルゴリズムを簡素化する事によりディジタル制御における演算 処理の高速化やチップ数の削減によるワンチップ化そして演算処理部のハード化による 超高速化にも有効です。

※ワンチップマイクロコンピュータの利点.
制御装置を製品化した場合,自動化したい機器に最低限必要な機能を備えたマイクロコ ンピュータシステムを組み込んで使用でき,安価に自動化を行えます.

つづく


文責
北海道大学 情報科学研究科
技術専門職員 石川 栄一

自動制御に関するご質問は次のメールアドレス宛に送信して下さい。



トップへ
トップへ
戻る
戻る
前へ
前へ
次へ
次へ