怖い虫の話 「 3.ウジ虫の怖い話」

若い頃は2週に1回くらいの割合で登山にいきました。この話は裏大雪縦 走の思い出話です。

トムラウシ山から五色ヶ原を通り,中別岳を経て高山植物群落の美しい高 根ヶ原を抜けたところまで来ると白雲岳が静かにたたずんでいるのが見え ます。
私達のパーティは長時間の山行の疲れを癒すために白雲岳の麓にある白 雲石室に向かいました。

登山道は一直線に石室に向かっています。その登山道の所々で糞が見え 隠れしているので,熊が近くにいるかも知れないと危険を感じ、ザックに付 けた熊よけの鈴を点検したりラジオの音を大きくするなどして前進しまし た。周りは段々と暗くなってきました。

そして,糞を懐中電灯で照らしてよーく見ると,なんと紙が付いているので す。熊が紙で尻を拭くわけがないので,私は、こ,こ、これは人糞ではない か,登山道のド真ん中でキジを撃つとは怪しからんと思いましたが,気を取 り直して石室に向かいました。

ようやく石室に着いたら先発隊の連中が酒盛りをしていました。私達のパ ーティは,石室の中が酒とタバコの臭いで空気が悪いのでテントを張って 寝ることにしました。


翌朝,私は御来光を拝んでから石室のトイレに行きました。大小兼用,し かも男女兼用の便器が一つしかないトイレは薄暗く,アンモニアの強い刺 激性の臭いで目から涙が出るほどでした。
また,あちらこちらに”メシ粒らしきもの?”が落ちていたので,トイレでメシ を食ったメンバーは誰だろうかと想像しながら踏ん張りました。

しかし,なんだか下の便槽の様子が変なのです。私は,恐る恐る懐中電灯 で便槽の中を照らしてみるとビックリ仰天。便槽全体がウジ虫でいっぱいな のです。
更にさっきの”メシ粒らしきもの?”がニョロニョロと動き出したのには腰が 抜けました。それはウジ虫だったのです。私は出る物も出ないまま慌ててト イレから逃げ出しました。

登山者が登山道でキジを撃つ謎も解けました。ウジまみれの石室のトイレ よりも美しい高山植物に囲まれ,雄大な大自然を味わいながらキジが撃て るのも北海道の山であるからこそできるのです。できれば登山道からそれ たところで用を足してもらいたいものです。
それから数年後,白雲岳石室は改築されたそうです。

【おわり】


【キジを撃つ】 : 私が会長をしている山岳会で用いている専門用語で「ウ ンコをする」という意味です。狩猟のときの姿勢が,それと似ているらしいか らなのですが、詳しくは分かりません。





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