主なビデオソフトメーカーの解釈と回答【5】


5.回答を控えたメーカーとその理由


■ BMGビクター株式会社

BMGビクター株式会社は、現在ビデオソフトを取り扱っておりませんので、今回 のご照会事項に就きましては、回答を見合わせて頂たく存じます。

■ 朝日新聞社 東京事業開発室

著作権法の改正等が関係業界で取りざたされているなかで,当社としては現 在,正式コメントは控えさせていただいております.

■ キングレコード社 映像事業本部ビデオソフト部

個人的には担当者に回答を依頼しましたが,当社としての正式な回答は,著作 権法について,現在,勉強中であるため控えたい.

■ アイペック社

(抜粋)私ども(株)アイペックは基本的には製品を仕入れてそれを販売(ビデ オ,レーザーディスク)している立場で,販売物の著作権についてはタッチしてお りません.そのため,アンケート内容については,会社としてお応えすべきでは ないと考えます.

■ 徳間コミュニケーションズ社

弊社(徳間コミュニケーションズ)は販売会社(卸業務)の為、すべての権利関 係は、他社が有していますので回答できません。あしからず御了承ください。

■ キテイフィルム社(口頭による回答)

当社は、映画製作はしていますが、ビデオソフトについては、別会社に委託して おり権利は別会社にあるため回答はできません。

■ ポリドール社

弊社の応えとしては「保留」とさせて頂きますので、ご了承下さい。

                                           [以上 7社]



6.問い合わせを無視したメーカー


昨年の11月から4度に渡り,照会文(返信葉書入り)を差しだしましたが,以下 のメーカーについては,何の返答もないため[問い合わせ無視]として処理致し ました.

アテナ映像社,アポロン音楽工業社,RCAコロンビア社,宇宙企画社,AE企画 社,エスピーオー社,トーラスレコード社,新東宝ビデオ社,創美企画社,大映, にっかつビデオ社,バップ社
                                  [以上12社]

以上が,主なビデオソフトメーカー42社の見解と対応です.



7.まとめ


昨年の11月から約3ヵ月に渡り,主なビデオソフトメーカー42社に対し著作権 などについての解釈および回答を求め,順次,その回答をPC−VAN等にアッ プロード(送信)してきましたが,日本ビデオ協会の回答や更に,文化庁著作権 課の回答も得ることが出来ましたので,本年2月24日にて,本件の問い合わせ は終了致しました.

■ メーカーの回答に対する私の見解

質問1および2について,ほとんどのメーカーは,家庭内での視聴のための複 製であれば合法であり問題無しとしていますが,一部のメーカーは,レンタルソ フトの複製は違法と解釈していますので,正確な判断が必要と思われます.
また,非営利であっても,複製した著作物の頒布やビデオライブラリーとしての 複製は違法とのことですが,文化庁著作権課の回答にあるように「結合関係の 強いサークル等のメンバー4〜5人が視聴するための複製も許される」ならば 「非営利でも複製した著作物の頒布は違法」という解釈は矛盾するように思えて きます.結合関係が強いのは,サークルのみではなく,親兄弟,また上司や同 僚などとの関係も,サークルなどより,非常に結合が強いと考えられ,著作物を 複製して配布しても違法にはならないのではないかと思われます.この点の解 釈には触れられて居ません.
現在,レンタルビデオは2日間借りて,200円前後で,かなり安くなってきてお り,コピーするのが馬鹿らしいくらいです.日本ビデオ協会の回答によると,文 化庁では,第30条の改正を検討されているようですが,現状にそぐわないと考 えます.いずれにしましても,複製は自粛すべきであると思います.

次に質問3の回答についてですが,著作権法第三十八条第一項により、非営 利目的で、既に興行などで公表された著作物であれば、著作者の許諾を得な いで上映は許されますが『間接的に営利に結び付くような上映は違法』とのこと です.
つまり,以下の三項目全ての条件に合致している場合は合法と解釈していま す.
  (1)営利を目的としないこと。
  (2)無料であること。
  (3)無報酬であること。 ただし、実質的車代であれば問題としない。

しかし,信頼できる筋からの情報によると,○○○協会が,上記の合法行為で も違法と決めつけ,大学などに対し脅しをかけるような事を行った経過があると の事で,学園祭での上映に対し非常に神経を使っているようです.
とにかく,営利,非営利を問わず,不特定多数を対象に上映などを行う場合 は,著作者の許諾を受けることが重要です.

最後に質問4の回答ですが,これについては,ほとんどのメーカーは的確に回 答されませんでした.質問の主旨はレーザーディスク(LD)と,ビデオテープ(ビ デオソフト)との大幅な価格差の原因についてなのです.
米国でのLDの価格は35ドル〜45ドル(日本円で約4400円〜5700円)であ り,更に廉価版の25ドル(日本円で約3200円)のLDも登場するとの事[2月7 日の北海道新聞より].
それに対し,米国のビデオソフトの価格は,約7〜8ドル(日本円で約1000円) との事.[AVCC社ビデオコム1987.1より引用]
AVCC社ビデオコム1987年1月号のCOM COM CLUB.では,ビデオソフ トの価格について次のように述べられています.


日本のソフトはまだ高価,
巨大なマーケットを放置している.

<前文略>.....米国は地域により,かなり事情が異なりますので,これが 必ずしも米国全体の状況ではありません.では始めましょう.米国では,まずあ らゆることに自由競争の考え方が貫かれており,日本のような再販価格や中 小,零細小売店を保護する法律が少ないためか,当地ミネソタでは,小売店 は,ほとんど大型小売業か,チェーン店で競争は激しく,ほとんどの品物が日本 より安価で売られています.....テープの質も高く日本で出回っているダビン グ物は見かけません.もし,このようなことを行うとFBIから,極めて厳しい罰則 が適用されるものと思われます.....市販ビデオソフトも日本より安く,たとえ ばミュージカルの「マイ・フェア・レディ」(2本1組)が,税込み6ドル34セントから 7ドル41セントですから,生テープより少し高いくらいです.....ソフト面から, 日米を比較した場合,日本では高価格という点で,消費者が気軽にソフトを楽し めなく,また,業界にとっては巨大なマーケットを放置しているという印象をもち ます.日本でもソフトを米国並に楽しめるときが,早く来ることを期待します.


また,バンダイ社の回答よると,米国の場合のビデオソフトの価格は「15ドル (日本円で約1900円)程度が経済ロット(30万本)」であると述べられていま す.何れにしても,米国のビデオソフトの価格は【米国でのLDの販売価格の半 額以下】なのです.
しかし日本の場合は,ご存じのように,多くのソフトは,ビデオソフトの方がはる かに高く,LDの2倍位の価格に設定されています.メーカーの回答は,これに ついては主に,

  1.非常に高い権利料
  2.品質管理,製造工程の違い
  3.約10倍の格差がある市場規模の違い

にあるとしています.

しかし,これらの回答が的を射ているのであれば,日本の場合はLDよりもビデ オソフトが高価という逆転現象は生じないはずです.
さらに,CICビクターから3500円で発売されているソフトのように安価な製品も あり,上記3点の理由は成り立たたなくなり矛盾します.興行などで既に減価償 却している作品は,レンタル向けではなく一般消費者を対象に,安く大量に販売 されることを多くの消費者が希望していることをメーカーは認識すべきと思いま す.
また,権利料の事はよく判りませんが,あるメーカーの非公式な説明によると, 定価の約35%であると聞いていますが,これが非常に高いとは思いません.
なぜなら,「著作権」と言うのは,貸与権,上映権,頒布権,複製権,放送権,上 演権,展示権,翻訳権などさまざまな権利の集合なのですからそれらの権利者 に対し使用料を支払うのは当然です.

2点目として,日本のビデオソフトが高い理由に「品質管理,製造工程の違い」 がある事を上げられていますが,逆に解釈すると「米国は,品質管理や製造工 程に手抜きをしているのでソフトが安い」とも受け取れ説得力がありません.ま た日本のビデオソフトメーカーがこのようなことを述べることは,米国のビデオソ フトメーカーに対し非常に失礼であると思います.

テープの質については,前述したAVCC社ビデオコムより

.....テープの質も高く日本で出回っているダビング物は見かけません.も し,このようなことを行うとFBIから,極めて厳しい罰則が適用されるものと思わ れます.....


と述べられているように,問題はないと考えます.

3点目に市場規模の違いが原因の一つに上げられていますが,これは消費者 の責任ではないと考えます.「約10倍の格差がある市場規模の違い」は,米国 のビデオソフトメーカーなどの努力の賜であり,日本のビデオソフトメーカーのよ うに,レンタル店に「おんぶ」しているようでは発展は期待できません.
日本においても市場の開拓は可能です.たとえば,あらゆる電気店,書店,レ コード店,コンビニエンスストア,スーパーマーケットそして各種のイベントなど で,人が多数集まる所を対象に市場を開拓すべきです.
日本では,大多数の家庭にVTRが普及しており,安ければ,必ず売れるはず です.一部のメーカーの回答のように「ソフトの95%〜98%がレンタル向けで あるから,あるいは業務用であるから高くてあたりまえ」という認識では,ソフト 産業のこれ以上の発展は有り得ないと思います.

最後に,貴重な時間をさいて質問事項に対しご回答されたビデオソフトメーカー に対しては心から感謝します.また,ご回答にたいし多少の批判をしましたが, 私はいつも「現状を批判せずして未来への発展は有り得ない」と考えておりま す.
もし,お気に触るような事がありましたら,ご無礼をお許し下さい.



 おわり

北海道大学工学部
文部技官 石川 栄一


トップへ
トップへ
戻る
戻る
前へ
前へ